「さすがにここは断れなかったみたいだね」

 マルチェロがやって来た。イザベラは体を固く強張らせる。

「僕とも一緒に踊ってくれるだろう?」
「主人は疲れております」

 オレが断りを入れれば、マルチェロは不機嫌に顔を歪める。

「本当にお前は躾がなってないな。僕はイザベラと話しているんだよ」

 イザベラはうつむいたままだ。マルチェロはその顔をしたから覗き込むようにして顔を近づける。

「ねぇ? イザベラ、もしかして躾けられてるのは君の方じゃないよね」

 ギラギラとした瞳、息の上がった声、まるで獣のようだ。