「好きです」

 もう一度呟いて、固く閉じた瞳に軽くキスをした。

「おやすみなさい。ご主人様、良い夢を」

 それだけ言って立ち上がり、オレは自分の部屋へ戻った。



 部屋に届けられたガラスペン。ペン置きも一緒に買ってくれたようで、そこには青い小鳥が付いていた。選んでくれたインクは、オレの瞳と同じ紫。添えられていたのは、真っ白なノートと辞書。

 なんであの人は。わからない。
 拒絶するなら、もっと手ひどく扱って欲しい。
 こんな風に、対等な人間みたいに扱わないで欲しい。
 そういうふうにされるから、オレが性奴隷(どうぐ)でいられなくなる。
 一人前の男みたいに、あの人に受け入れて欲しいだなんて不相応の夢を見てしまう。
 

「馬鹿みたいだ……」

 呟いた言葉にランプが揺れた。