「叔母さま? 本は見つかりましたか?」

 セシリオが屈託のない声で笑いかけた。
 その後ろで本屋の娘が不安そうにしている。きっと異変を察して、来てくれたのだ。

 マルチェロはセシリオににっこりと笑って見せた。

「久しぶりだね、セシリオ」
「こんにちは」

 セシリオはあっさりと挨拶をして、イザベラに駆け寄った。

「僕、欲しい本をたくさん見つけたの」
「まぁ、良かったわね」
「叔母さまは?」
「叔母さまも見つけました」

 イザベラはニッコリと笑って見せる。

「お包みしますね。少しこちらでお待ちください」

 本屋の娘がにっこりと笑い、ごく自然に応接セットへイザベラとセシリオを案内した。
 マルチェロはあからさまに舌打ちをする。
 それにイザベラは肩を震わせた。

「叔母さま?」

 セシリオがぎゅっとイザベラの手を握った。
 イザベラはセシリオの手を握り返して、小さく微笑んだ。