「いいかげんにしてください。ここは本屋です」

 イザベラが静かに顔を上げた。
 唇が震えている。声も震えている。まなじりにはうっすらと透明の幕が張って、黒真珠の様に瞳が潤んでいる。
 恐怖に震えながらも、立ち向かおうとするその姿が煽情的だ。

 オレもマルチェロも多分同じ理由で、息を飲んだ。
 この瞳をもっと濡らしてみたいという加虐心が顔を出す。その反対にこれ以上傷付けてはいけないと理性が袖を引く。

 美しい、そう思わずにいられない。