門をくぐり、長いこと中庭を走りたどり着いたエントランス。広々とした緑の庭は、手入れの行き届いた芝で開けている。建物の周りには色とりどりの薔薇が咲き誇る。
重厚で対称的なレンガ造りの大きなお屋敷。白いアーチと窓の枠が、煉瓦のオレンジに映えて美しい。
性奴隷を飼う様な淫靡な雰囲気は微塵もない。まっとうな健全さで拍子抜けする。
もう少しオドロオドロシイ郊外の別宅にでも連れ去られて、地下牢にでも押し込まれるのかと思ったら、そうではないらしい。
恐る恐る促されるままに老紳士へ付いていく。
明るい広間には、大きな花瓶に新鮮な花が飾られている。派手ではないが優雅だ。
何が目的なのか見当もつかない。
通された応接間に入ると、中には黒いワンピースで化粧っ気のない顔をした女がいた。まるでメイドのように地味だ。でなければ修道女だ。
真っ黒の髪を二つに分けておさげに結っている。真っ白な肌の色は病的すらあり、色白は七難隠すのかもしれないが、それ以上の怖さを感じた。