「叔母さま! 僕も!」 セシリオが強請る。 「いいわよ。好きな色のインクを選びなさい」 「ありがとう」 「イニシャルを彫ってもらいましょうか?」 「うん!」 セシリオがインクを選びに行く。 「ジャンも好きなインクを選びなさい。イニシャルはJでいいかしら」 イザベラが屈託なく笑った。 ジャンという名前は俺の名前じゃない。ここを去ったら捨てる名前だ。奴隷の証の名前だ。だからそんなのいらない、だから。