「この服……私のものではないわ……」
「オレが買いました」
「勝手なことを!」
「『他に欲しいものがあるなら言え。用意させる』とセバスチャンから言われています」
「それは貴方が必要なものだわ!」
「ですから、オレが買ったんです。デザインが気に入りませんか? 色ですか?」
「……そうではない……けれど」
「サイズが合ってない?」
「違います。満足はしているわ」
「なら良かった。オレ、ご主人様のことを何も知らないなって思ったんです」

 服を選びながら思った。好きなもの、好きな花、好きな詩、好きな男のタイプ、何も知らない。そう思った。そして知りたいと思った。

 イザベラに手を差し出す。

「ご主人様を知りたい。教えてください」

 真摯な目でイザベラを見れば、目を見開いて驚く。

「……嘘はいらない、言ったでしょう」

 イザベラはそう言って、差し出した手を叩き落とした。