翌朝。
朝早くに、イザベラの部屋に入る。寝室から出てこない事をいいことに、新しく買ったワンピースを広げた。
大きな姿見を持ち込んで、その前に椅子を置く。
メイドたちは少しうれしそうな顔つきで待っていた。
イザベラの机には、古臭い本とノートが並べられて置いてある。文字の読めないオレには何が何だかわからないが、令嬢らしからぬものだということはわかる。
「ご主人様って、いつも何をしてるの?」
メイドに尋ねる。
「子供向けの本を書かれているのですわ。領地の学校の教科書はお嬢様の作られたものですし、今はお坊ちゃまのために子供向けの百科事典を作られているそうです」
「百科事典……」
「ええ、屋敷にある大人向けの事典を子供の興味のあるものに絞って、わかりやすくするのだとおっしゃっていました」
そんなことをしていたのか。
オレはびっくりした。そういうことは賢者がやっているのだと思っていた。貴族の令嬢がそんなことをしているという話は聞いたことがなかった。