「聞きたいことがあるんだけど」

 オレはセバスチャンに声をかけた。
 セバスチャンはいつでも不愉快そうにオレを見る。

「ご主人様は社交はどうしてるの?」
「今まではお断りしておりました」
「そのままというわけにはいかないよね?」
「いずれ……とお考えのようです」

 いずれって、いつだよ!

 オレは社交界にアクセサリーとして連れて歩かされていたから、少しは様子がわかるのだ。
 訳もなく断り続けるには、それなりの力がいる。ただのお嬢様だった頃はひきこもりも可能だっただろう。だけど、今は伯爵家の女主人だ。
 果たしてこの伯爵家には、断り続ける力があるのだろうか。
 たぶんない。正式な嫡子はまだ七歳。後見人のイザベラは、未婚の二十四歳で、見た様子では宮中に仕事もないだろう。
 喪に服すといっても一年が限界だ。

 何の準備もなく社交界に引きずり出されたら、痛い目を見るのはイザベラだ。