「綺麗な手ですね」

 苦労を知らない綺麗な手。貴婦人の手。

「二十四歳おめでとうございます」

 手の甲にキスを落とせば、イザベラは顔を真っ赤にした。

「……な!」

 こんな儀礼的なキスで顔を赤くするなんて、意外すぎてこちらが照れる。

「今日が誕生日だったのでしょう?」

 イザベラの瞳が涙で膨れ上がる。

「もう、だれも祝ってくれないと思ってたわ」

 裕福だけれど悲しい人なのかもしれない。
 その時オレはそう思った。