オレに用意された部屋とは全く違う、シンプルそのものの部屋。壁は上までビッシリと本に埋め尽くされ、窓は北側だけ。窓の前におかれた重厚な机の上にまで本が積み重なっている。
 壁紙は模様の無い水色。置時計はシンプル。姿見すら無い。
 おおよそ令嬢の部屋とは思えない。良くて書斎だ。ただ、ガラスのペン置きとつけペンだけが、その中で輝いて見えた。

「ご主人様」
「何かしら?」
「貴女のお顔がもう一度見たくてやって来てしました」
「……」
「大それたこととは思いますが、初めてあなたをみた瞬間、真実の愛に気がついたのです……!」

 瞳をキラキラさせて、愛の言葉を囁けば、ご主人様は頬を赤く染め……てなかった!?

「御託は要りません」
「……本当です!」

 ついた嘘は例えバレたとしても、最後まで突き通す。これが男としてのマナーだ。

「交合いに来たのでしょう? 寝室はこっちよ」