逃げ出すとは思わないのだろうか? 疑うことを知らないような世間知らずのお嬢様。
 
「では、セバスチャン。ジャンに家を案内してあげてちょうだい」
「承知しました。お嬢様」

 イザベラはそういって部屋を出て行った。
 残されたのは不機嫌そうな老紳士とオレだけだ。オレは呆然とする。