答えれば、イザベラは俺の首にかかる鎖の錠を外した。ジャラリと重い鎖が、病的にまで白い掌に落ちた。
新しい首輪をつけられるのだろうと、大人しく顎をあげて待っていたら、イザベラは不思議そうな顔をした。
首輪は奴隷の証だ。逃げても逃げきれないように付けられる。まぁ、金さえ払えば秘密裏に外してくれる裏の稼業もあるけれど、金がなくては逃げられないようになっている。
「どうしたの?」
「あの、新しい首輪をつけるのでは?」
「そんなの嫌よ、みっともない」
イザベラは嫌悪感を丸出しにして吐き出した。
今までの屋敷では豪華な首輪を用意されていた。肌当たり良く鞣された革をきらびやかな宝石で飾り立て、家の家紋をゴールドのプレートにして付けるのが流行っていた。
美しい奴隷はステイタスなのだ。
「それにこの屋敷には子供がいるの。まだ、その子に性奴隷の存在を知られるのは嫌なのよ」
「承知いたしました」
オレは頭を下げる。スカスカした首元が、なんだかこそばゆかった。
いつでも逃げ出せるという心の軽さと、なぜかわからない不思議な不安感。これはいったい何だろう。