久々なのだ。もっとよく見たいのに。

「百科事典の見本を持ってきました」

 言うや否や、イザベラは勢いよく顔を上げた。興奮した面持ちで、小走りで近寄ってくる。

「もうできたの? 早いのね! 見せてちょうだい!」

 嬉々とした瞳がキラキラと輝いている。
 奪い取るようにして中身を確認する。
 オレは戦々恐々だ。ダメだしされるかもしれない。

 紙の捲れる音だけが響く。ジワジワとイザベラの口角が上がっていく。こんなにニヤニヤとしたイザベラを見るのは初めてだ。そのことが新鮮で、なんだか目の奥が痛くなる。

「素敵ね……」

 イザベラがため息をついた。

「素敵だわ」

 もう一度噛みしめるように言う。