イザベラはいつものように机の上で書き物をしている。
 変わらないガラスペン。菫色のインク。使い方のわからないカラクリ。

「久しぶりね……その、なんて呼んだらいいかしら?」

 イザベラはギクシャクとした笑いでオレを迎え入れた。少し怒ったふうで、顔も赤い。

「ジャンと」
「ジャン?」
「ええ、ジャンという名前にしました」
「……そう……」

 イザベラはそれを聞いて俯いてしまう。

「とてもいい名前だと言われました。『神は慈悲深い』という意味なんですね」
「そうよ、大切な名前なの」

 イザベラはオズオズと顔をあげた。目が合った瞬間に、また慌てて顔を下げて隠してしまう。