***
「麻今日の勉強会で進展させてきなよね。」
放課後、荷物の準備をする私に
よっちゃんがそう声をかけた。
「し…進展…?」
「はぁ…あんた、本当に勉強教えてもらうためだけに行く気?」
「え」
「恋も!二人きりなんだから進展させてきな。」
「よっちゃんは?来ないの…?」
「行くわけないじゃん。
そもそも、文化祭の準備もあるし。」
そう。テストのすぐあとに迫った文化祭。
よっちゃんはその実行委員だ。
「ていうか、好きだって知って…!?」
「麻のこと見てたらわかるよ。
夏休み前より明らかに香月くんへの好意が増してる。」
嘘でしょ…。
よっちゃんも来ると思ってたから、全然そういう覚悟はなかった。
それに、香月くんのことが好きなのバレてたなんて。
そりゃタイミング見てよっちゃんには言おうと思ってたけど、
態度でバレてたなんて恥ずかしい…。
「せっかく二人きりなんだから、
色気だして少しくらい意識されて帰ってこい!」
「色気…」
自分のからだに視線を落とす。
あれ、それってどこにあるものなんだっけ…
「ま、意識はされてると思うけどね…」
「え?ごめん。何て言った?」
よっちゃんはふっと笑顔を浮かべると、
私の背中を押した。
「なんでもない!ほら、香月くん帰っちゃうよ。」
「うん。」
よっちゃんに背中を押され、
私は香月くんのあとを追って走り出した。
せっかくよっちゃんが作ってくれた機会、
無駄にしないように頑張るぞ!