「俺、この後の小テストの勉強するから先戻るな。」

一足先にごはんを食べ終えた大連くんがそう言って立ち上がった。


「あ、歴史の?」

「定期テスト自信ないから、小テストでちまちま内心稼ぐんだ。」

「頭いい…」


私も早く食べて勉強しよ。

定期テストもできないのに、小テストも昨日チラッと教科書見ただけだ。


大連くんは余裕のある笑顔で自習室を出ていった。

香月くんとよっちゃんも、ごはんは食べ終わっていて暇そうにスマホを見ている。


「ごめんね!すぐ食べるから。
あ、戻っててもいいからね。」

「別にいいけど…
麻って成績どの辺なの?俺よりは下だよな?」

言い方…っ

かなりイラッとしたが、事実なので怒りに任せて否定することもできない。

「真ん中より…ひとクラス分下くらい…」
「130番くらいか」

せめてもの反抗でわかりづらくいったが
香月くんはあっという間に私の順位を言い当てる。


「まぁお前効率悪そうだもんな。」

「麻はなぜか赤点はいつも回避するよね。」

「ま、まぁね!
ていうか、よっちゃんは頭いいの知ってるけど、香月くんは!?
私と同じくらいだったら偉そうに言わないでよね!」


香月くんはバカにするように私を見下ろすと、
ふっと鼻で笑った。


「上からひとクラス分には入るかな。」

「っ!」


部活もやってて、授業も時々寝てるくせに
どうして頭いいの!?

悔しい~!


「へぇ、香月くん頭いいんだね。
そうだ、麻に勉強教えてあげてよ。」

「へ!?」
「え…」

よっちゃんの突拍子のない提案に
私と香月くんは顔を見合わせた。


「イヤだよ。麻学習能力低そうだし。」

「な!私もやだ!香月くん教えんの下手そう。
いつもみたいによっちゃんが教えてよ…」

「私も効率よくないよ。
忙しい香月くんが成績いいのって要点絞って勉強してるからでしょ?
コツコツもできず、効率も悪い麻にピッタリじゃん。」


よっちゃんは相変わらず美しい笑顔で容赦なく私をディスる。


「でも…」

「まぁ今日だけでもさ。
よろしくね。香月くん。」


有無を言わせないよっちゃんの笑顔に
私と香月くんは「はい…」と頷くしかなかった。