落ちてく。


落ちて、いく。



ポツリ…

頬に触れたのは水滴。

雨か…


空はどんより暗い。


『ああ、でも安心だ…』


だって、香月くんが死なないから。


私の頬から雨粒が落ちていく。


プーーーー

『みどり駅行きー…』


バスが来た。

乗る?いや、香月くんと歩いて学校に行く。

最近はそれがすごく楽しい。


バスのドアが閉まり、発進した直後、


気づいた。



『え、香月くん…?』


窓越しに見えた横顔。

間違いなく香月くんだった。


『な、なんで…待って!』


私は走って追いかける。
バスはそんな私に気づかず加速していく。


『待って!香月くん!
香月くん!!』

どんどん

どんどん

スピードが上がる


頬を伝う雨。


『行かないでぇ!!!』


バスは

交差点でダンプカーと激突した。


見たこともないような歪み方でバスは止まった。


直後、ポップコーンが弾けるように
バスは粉々に砕けた。


『香月くん…』





***

目を覚ますと、今までで一番大粒の涙がこぼれていた。



夢…

予知夢だ。

予知夢が…変わってしまった…。



私は流れる涙をぬぐう気力もなく、布団のなかに顔を埋めた。