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2学期初日だから、始業式とホームルームだけで
すぐに解散となった。


サッカー部はもちろん部活。


「七瀬さん!はよー!」
「高崎くん、おはよう。」


昨日までほとんど毎日部活で会ってたから、
サッカー部のメンバーには久しぶり感はない。

こうして始業式のあとに当たり前のようにマネージャーしてるなんて、夏休み前は想像もできなかったな…。


「麻ちゃん、最後チーム戦だから、
得点板とかの準備よろしくね!」

「うん、わかった!」


東郷さんからの指示にも基本的には対応できるようになったし、すごい成長!

なんか嬉しいな…



練習の締めくくりのチーム戦になり、
ようやく私と東郷さんはベンチに座った。


サッカーはそんなに頻繁に点が入らないから、
得点係の私はちょっと楽できる。

東郷さんはアシストとかファウルの記録をとっているから、ずっと試合に集中している必要があるけど…

「ねぇ、麻ちゃん」

こんな感じでいつも余裕で話しかけてくる。

「何?」

「朝、香月くんと手繋いでたってほんとう?」

「っはぁあ!!?」


予想外の言葉に、思わず大きい声が出て、
慌てて自分の口を押さえた。


「学校の近くの道端で。見た子がいるって。」


それって…今朝香月くんと握手してたやつだよね!?

なんでそんな噂に…!


「ちがうちがう!あ、握手だよ!」

「握手?なんの?」

「え…に、2学期もよろしく的な…」

「へぇ。変なの。
私麻ちゃんによろしく握手されてないよね?」

「あっ!よ、よろしく!」


私は慌てて東郷さんの手を握った。

「いま記録中」と言って、すぐに手は払われた。


「麻ちゃんが『間抜け』過ぎるから、私の気持ち香月くんにバレそうになって、協力はやめにしたけどさ、私釘刺したよね??☆」

合宿の時、協力しようと画策してすぐ、
香月くんに東郷さんの気持ちがバレそうになって(ていうかほぼバレて)、協力をやめるに至った。

「う、うん!もちろん覚えてる!
協力はできなくなっちゃったけど、
邪魔はしないよ!」

「え~、すご~い。
(間抜けなのに)覚えてたんだぁ♡」


東郷さんのこの裏性格は、突き抜けててもはや清々しい。


「じゃあさ、握手とか一緒に徒歩で登校とか…
やめてほしいんだけど。」

「握手はごめん…。でも登下校だけは…」

「っ…」


東郷さんは私から顔をそらすと、
しばらく黙ったままだった。