「麻?大丈夫か?」
「あっごめん!!何してんだろ、私。」
大連くんの腕を慌てて離し、
赤くなった顔を隠すように背けた。
「私、一人で行くから大連くんは戻ってて。」
「俺も行く。
香月になんか言われたんだろ。
そんな気ぃ使わなくてもいいよ。」
「でも…」
「さっき釣り堀で十分ボーッとできたし、
そろそろ働きたい気分なの。」
「うん…わ、わかった。」
大連くんと手分けして先輩に声をかけるうちに、だんだんと冷静になってきた。
香月くんと東郷さんが二人になるよう私が協力しているくせに、何を動揺してるんだ。
それに二人がくっついたら素敵じゃん。
東郷さんの恋が叶ったら、きっともっと可愛くなる。
そしたら今度は私の恋に協力してもらって…
恋ーー
「麻。戻るよ。」
「えっ、もう終わり?」
「うん。肉食いにいこうぜ。」
まだ5人くらいにしか声かけてなかったのに!
ほとんど大連くんにやらせてしまった…。
私って役立たずだ…。
「ごめんね…トロくて。」
大連くんは少し驚いたような表情を浮かべ、
すぐに軽やかに笑った。
「ありがとな、麻。」
ぽんっと頭を撫でられるけれど、
自分の無力感がなくなることはなかった。