「かっ、香月くん。大連くん。」
「麻」
「うるさい、魚が逃げる。」
もちろん悪態をつく方が香月くん。
「ご、ごめん。
あの…みんなでビーチバレーしない?」
今度は声を抑えて機嫌を損ねないように尋ねる。
「…いいや。まだ釣れてねぇし。」
「そ…そこをなんとか…
大連くんは?」
「いや…俺も…」
「??」
あれ、大連くん…なんか元気ない?
もしかしたらビーチバレーとか好きじゃないのかな…
いや、初めての合宿で疲れてるのかも。
でも…!
脳内に東郷さんの笑顔がリピート再生される。
「そっか…!
で、でも…みんな香月くんたちを待ってて…。
きっと楽しいよ!」
「……」
香月くんは黙ったまま釣糸の先のブイを見ている。
「いいよ、香月。
ちょっと顔出してこいよ。」
「え~…」
「大連くんは?」
「俺は魚釣れたら行くよ。」
「……
なんか…疲れてる?」
「え、いや別に…」
大連くんは少しひきつった笑顔を作って見せた。
なんか…元気がない大連くん珍しいから、心配だ。
「あ、えっとさ!
お昼、お肉いっぱいだから!
あ~、あと魚釣れたら焼いて食べれるよ。」
「麻、魚さばけんのかよ。」
すかさず香月くんが茶々を入れる。
「ちょ、ちょっとグロいのは…
あ、でも釣り堀のおじさんが代わりにやってくれるんじゃ…!」
「ここおじさんいないし。」
「えっ!じゃあ香月くんがやってよ…!」
「やだ。俺も内臓とか無理。」
「プッ…ハハ…!!」
突然大連くんが笑い出し、私と香月くんは目をまんまるくしてキョトンとした。