午後4時頃

泣きつかれて落ち着いた私は
不細工な顔のままグラウンドへ戻った。


「麻ちゃん!大丈夫なの?」


私の姿を見つけると、
東郷さんが駆け寄ってきてくれた。


「あ、うん。ごめんね。仕事しないで…」

「そんなのいいよ!無理しないで。
今日は休んでていいんだよ?」

「ありがとう。もう平気だよ。」


私が弱々しく笑うと、東郷さんは「そう?」と
言って、座ったままできる簡単な仕事を任せてくれた。


情けない…


私は自信のない小さな文字で渡されたノートに
書き込んでいく。


「麻ちゃん…」

「何?」


東郷さんの方を見ると、コートの中を見つめ、
何やらもじもじしている。

いつもハキハキしているのに、珍しい。


「あの…さっき…
香月くんとどこ行ってたの?」

「え…ああ、宿の横のところだよ。
なんか涙が止まんなくてね。
気ぃきかせてくれたの。」

「そうなんだ…。優しいね、香月くん。」

「…うん。」


認めるのはちょっと癪だけど、実際そうだ。

香月くんはいざとなったら私を放って行かない。

自転車で追いかけているときも、
さっきみたいに重りに耐えきれなくなったときも、

振り返って、私を待ってくれる。


「仲…やっぱりいいよね。」

「え?うん…。」

「付き合いたいとか思うの?」

「は?」

「あんなにカッコよくて優しい男子、
付き合いたいよね。やっぱり。」

「????

いや、ないかな。」

「はぁっ!?
なに余裕なふりしてんの、ブス!

あ…。」



私は数秒硬直した。


え、今東郷さんが言いました?


『はぁ!?』とか『ブス』…と、か…



「てへっ、口がすべった♡」


がーーん

やっぱり東郷さんなんだ!!