1日目を経験したからか、2日目は少し余裕をもってマネージャーの仕事をこなすことができた。
東郷さんは相変わらずニコニコしながら
私の何倍もの速さで仕事をこなしていく。
「七瀬さん~、コケた。絆創膏ない?」
午前の練習の終了間近、
高崎くんがフニャッとした声で私を呼んだ。
「えっケガ!?大丈夫?」
見ると、膝に血がにじんでいた。
急いで救急箱から絆創膏と消毒液を引っ張り出す。
「まず消毒…」
「麻ちゃん、待って。
高崎くん、先に水で洗ってきてくれる?」
私がちゃらんぽらんな手当てをする前に
東郷さんが的確な指示を出してくれた。
「了解。手当ては七瀬さん指名だからね!」
「えっ」
高崎くんは調子のいい言葉を残して、
水道の方へ走っていった。
「あ、ありがとう。東郷さん。
ごめんね。私、バカで…」
「全然いいよ?♡」
あれ、『バカ』はスルーされた…。
いや、バカなんだけどね!
「高崎くん戻ってきたら手当て、よろしくね。」
「うん!」
あとは消毒して、絆創膏貼るだけ…
ん?ガーゼは?包帯もいる?
自信なくなってきた…。
「と、東郷さ~ん…ヘルプ…」
「わっ、香月くん大丈夫!!?」
「コケた。」
「大変!水で洗おう!肩貸そうか?」
「別にいい…」
今度は香月くんがひじを押さえながらやってきた。
やっぱりサッカーってケガが多いんだな。
ていうか、東郷さんの対応がさっきの高崎くんへの対応とはまるで違うのですが…
「な~なせさん!よろしく!」
「あっ、うん。」
高崎くんが戻ってきて、私は手当ての準備をする。
と、とりあえず自分でやってみよう…!
「なに?香月もコケたん?」
「まぁ。もう脚がガタガタで。」
「ははっ、だっせ。」
「お前が言うか。」
私がふと横を見上げると、
ちょうど香月くんが通りすぎるところだった。
「あ」
肘から腕を伝う香月くんの真っ赤な血に
私の心臓が今までにないくらい大きく跳ね上がった。