何がなんだかよくわからないまま、
初日の練習はどんどん進み、
夕方前ようやくゲーム練習になってマネージャーの仕事は落ち着いた。


「麻ちゃん。ファウルとかプレイヤーの記録は
私がとるから、得点とタイマー見てもらってもいい?」

「は、はい!喜んで!」

「ごめんね。いきなりいろいろ働かせて…
疲れたよね?」

「いいえ~♡」


東郷さんが可愛く気遣ってくれるから、
疲れも軽く吹き飛んだ。

今なら少女漫画の男子の気持ちわかる!
癒し系マネージャー!!
最強だよ!


ピーッ


「あ、香月くん!」

香月くんがゴール決めた!
すごい!!


私は意気揚々と香月くんのチームの得点をめくる。

基礎練の時は余裕なかったけど、
いつもより近くで香月くんのサッカーが見られるのは楽しいかもしれない…。

もともとサッカーに興味なんてなかったのに…

香月くんを見ているのは不思議と飽きなかった。


「麻ちゃんって香月くんと仲良いよね。」

「え…」


一瞬東郷さんの声に抑揚がないように感じて、
顔を見ると、今まで通りニコニコ笑っていた。

気のせいか…


「うん。クラス一緒で…帰り道も同じなの。」

「そうなんだ。
付き合ってる訳じゃないんでしょう?」

「もっもちろん!友達だよ!」

「そうなんだぁ~!お似合いなのに!」


えっ
急に声がワントーン高く…

もう一度東郷さんの表情を見ると、
さっきよりニコニコ笑っていた。


何?
めっちゃ笑顔。
なぜ!?


「アハハ~」

とりあえず笑っておこっと。


「……。」

沈黙!?
お、怒らせた!?


「香月くん、カッコいいよね。」

「えっ!す、好きなの!?」

「違う違う!そもそも私たち釣り合わないよ!」

「え、香月くんが性格悪いから…?」

「……!?」


え、今度はドン引きされた!?

なんか間違えた!?


「アハハ~」

とりあえず笑っておこっと。



「……もうすぐ前半終わるよ。」

「あっ」


タイマーが大きな音を鳴らし、
その後会話が再開することはなかった。


私、何か間違えた…!?