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「よ、よろしくおねがっ、お願いします!!
七瀬 麻です。
えっと…お願いします!」
「「お願いしゃーーす!!」」
ひいっ
圧力!
私は爽やかな風が吹くここ軽井沢で
総勢40人のサッカー部員に頭を下げられている。
怖いぃ…
事の発端は先日の軽い一言。
『し、失礼な…!
私だって…きっと…たぶんできるよ…。』
(サッカー部マネージャー)
なぜむきになってあんなことを言ってしまったのか…
後悔しても後の祭り…
その後、参加する前提で高崎くんから
合宿の日程・場所・マネージャーの仕事リストが
ラインで送られてきて、私に断る勇気などなく…
「アップ始め!」
「「はい!!!」」
「麻ちゃん。今のうちにジャグ作ってくれる?」
「え、ジャグ…えっと…」
「じゃあ、よろしくね!
そのあとミーティング用の資料作るから~」
「えっ…待っ…」
ごめんなさい。
マネージャー私にもできるとか思ってすみません。
何が何やら…
初対面の人たちもやったことのない仕事も
私にはキャパオーバーだよー!
爽やかな風が吹く軽井沢で…
夏休みに…
私何やってるんだろう。
焦りを通り越し、ぼんやりする私の視界に
香月くんが映りこんだ。
授業中も、私と会話してるときも
やる気なさそうな顔をしているのに。
今は目の前のことに夢中だ。
サッカーが好きなんだ…。
私は?
私は何かに一生懸命になれてるだろうか…
「麻ちゃん、大丈夫?」
「へっ!」
声をかけられハッとなった。
「東郷さん…ご、ごめんね。
ジャグの作り方教えてもらってもいい?」
「あ、そうだよね!ごめんね!」
東郷さんはバックに花が浮かぶような
キラキラした笑顔を私に向けた。
か、可愛いなぁ…
東郷さんは同じ一年のサッカー部マネージャーさん。
私と違って4月からずっとマネージャーを頑張っている。
仕事できるし、可愛いし、優しいし、
スタイルまでもいい
→東郷さん
どんくさい、不器用、見た目・ザ・平均、
日課はストーキング
→私
同じ月日を過ごしてきたのに、
どうしてこうも人は違うのでしょう…
そんな意味もない自問自答をして、
私は小さくため息をついた。