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香月くんに予知夢のことを知られてから数週間ー

夏休みに入る数日前のことだった。


「っっ!!!」


目覚まし時計の音で目を覚まし、
荒い呼吸と流れる涙にすぐ気づいた。

全身汗でぐっしょり湿っている。


「冬…冬だ。」


その日、少しずつ詳細になっていた予知夢から
重要な情報を得ることができた。

季節だ。


「…急いで知らせなきゃ…」


私は慌ててシャワーを浴びて、朝ごはんを食べ、
いつも通り香月くんの家の方へ向かって
自転車を走らせた。



「あ、香月くん。」

「げ、来た。」


いつも香月くんを待っている場所より学校寄りの路地で香月くんに遭遇した。


「いつもより早い!いつもと違う道!
どうして待っててくれないの。」

「おはよう、麻。」

「え…あ、おはよう。」


エヘヘ…

香月くんは最近、私を名前で呼んでくれるようになったんだよね。

それが結構嬉しい…。

相変わらずストーキング、もとい護衛は
ものすごい嫌がるけど、一応友達には戻れたと
思う。


「単純なやつ。」

「へ?」

「なんでもねぇよ。モタモタすんな、今日朝練。」


香月くんはあくびをしてそう言うと、
自転車をこぎ始めた。



ちなみに香月くんは今、自分の自転車に乗っている。


予知夢のことがバレても、香月くんは大連くんの
自転車で登下校を続けていた。

それなら香月くんの自転車を部室棟の裏に隠す必要もないわけで…


隠していたことをぺろっと話してしまった私は
案の定、
香月くんにひっぱたかれた。


手加減はしてくれてるんだろうけどさ!

ひどくない!!?


そんなドS星人を守るため、
日々奔走する私…可哀想……。



「そ、そうだ!予知夢!」

「あ?」

「冬だよ、冬なの!冬。」

「くそ暑いのに、冬連呼すんな。
しゃべる余裕あんなら、スピードあげるぞ。」

「ちょ、待って。わかった。
しゃべらないからゆっくり注意して進んで。」


香月くんはため息をつくと、黙って前を向いた。


しょうがない。

予知夢のことは休み時間とかによっちゃんも
交えて話そう。

それより今は周囲に細心の注意を払って、
香月くんを守らなきゃ。


私たちは黙ったまま学校まで走った。