「かく…隠すって?」

わー、我ながらとぼけんの下手すぎ!

落ち着け。
冷静になれ。

こんなときよっちゃんなら…


「なんであんなに必死に止めるわけ?」


私は深く息を吸い、唾をごくりと呑み込んだ。


「別にただ一緒に帰りたいからだよ。
置いてくなんてひどくない?」

「……」

「そりゃ私だってキレるよ。」


よし、怒ったってことにしよう。

さっきのは必死に止めてたのではなく、
激怒の咆哮よ!


「キレてたのに、俺の腕掴んで離さなかった。」

「え?」

「ぶん殴ればよかったじゃん。」

「いや、そんなひどいことできないよ…」


香月くんは私の目を覗き込み、
はーっとため息をついた。


「お前が泣きそうになるのはいつも俺が一人で
帰ろうとするときだ。」

心臓がドキリと嫌な音を立てる。

「そのくせ雨の日は喜んで一人で帰ってった。」

「あれは…ずぶぬれだったから早く帰りたくて」

「あと、このストーカーいつまで続けるのか
聞いたら、『"まだ"わからない』っつった。
"まだ"って何。」

「そ、それは…」

「なんで家や学校に着いた瞬間安心したような
顔する?
なんでお前は俺に謝るんだよ。」

「っ…」


次から次へと痛いところをつく香月くんの質問に
私は言葉を失ってしまった。

言い訳が見つからない…。

こんなことなら、香月くんのことが好きっていう
ことにしておけばよかった…。





「お前…俺のこと殺そうとしてんじゃねぇの。」


「っっ、バカにしないでよ!!」


私は思わず香月くんを突き放した。