先に…帰った?
「つっても、数分前だから近くいると思うけど。
自転車置いて、俺の折り畳み傘で歩いて帰ってった。」
「そ、そんな…」
「ごめんな。
麻、一緒に帰ろうって言ってたのに。」
一人で…!?
私バカだ!
また同じ失敗するなんて!
私は落としたカバンを拾い、駐輪場へ走り出した。
「麻!?傘は!!?」
「いいの!自転車で行く!」
「ちょっ…」
私は自分の自転車を急いで引っ張りだす。
何か言いかけた大連くんを無視して
雨の中全速力で走り出した。
夢の中のあの血の拡がり方。
もしかして雨だった…?
事故現場なんて、実際見たことないから
乾いてるときと濡れてるときの血の拡がり方の
差なんて知るわけない。
嫌な予想を頭から揉み消す。
間に合う。
間に合って…!!
あの日が…今日じゃないことを早く確かめに…!
雨粒が目に入って視界が悪い。
梅雨独特のぬるい雨。
やだ!
香月くんが死んじゃやだ…!
私みたいなヤツにストーキングされてたのが
生前最後の記憶なんてあんまりだよー!!
数分間こぎ続けていると、見慣れた背中が現れた。
「香月くん!!」
私が叫ぶと、香月くんは心底嫌そうな顔で
振り返った。