「ちょ、本当に大丈夫?麻」
「気にしないで…ごめん。」
本当に「ごめん」が口癖になりそうだ。
私は授業の準備をするふりをして、
この話を強制的に終わらせようとする。
私の気持ちを察してくれたのか、
よっちゃんは話題を変えてくれた。
「せっかく香月くんと仲良くなったのに
すでに変な人認定されてるの?」
「えへへ…そうみたい。
昨日友達になってって言っちゃったんだよね。」
「プッ…麻、積極的ぃ♡」
「普通に、普通にね!
変な意味ないから!」
「はいはい。」
よっちゃんの思う変な意味はないけど、
私的には変な意味しかない。
授業開始のチャイムが鳴り、
よっちゃんも後ろの自分の席に戻った。
「はい、授業始めます」
「起立、礼、着席」
「麻、なんか話したいときはいつでも聞くからね。」
椅子を引く音の中、
後ろからそっと呟かれた言葉に
私の動きが止まった。
ヤバい。
泣きそう…
口を開いたら泣いてしまいそうで、
大きく頷くことしかできなかった。
こんな嘘みたいな話でもしていいんだろうか。
私一人でこれを抱え続けるのは不安だ。
昨日感じていた正義感と責任感、
あと自分だけ特別な力を持った優越感
それだけじゃない。
この大きい試練には
人ひとりの命がかかっている。
覚悟が必要だ。
私は冷たくなった自分の手を握りあった。
香月くんに予知夢のことを知られちゃいけない。
でも、どんなに辛くても大変でも恥ずかしくても
香月くんを守る責任が私にはある。