家に着くと、私より濡れていない香月くんが
洗面所からタオルを持ってきてくれた。
「早くふけ。」
「うん。」
「風呂は?沸いてないよな?」
「あ、うん。追い焚きで…」
香月くんは私が指示するまでもなく、てきぱきとお風呂の準備を整えた。
「ごめんね。あの…説明を…」
「いいから。」
香月くんは濡れた私の前髪を優しく掻き分けた。
「先あったまってこい。」
「っ…うん!////」
そう言えば…私、無我夢中だったとは言え、
香月くんに大声で告白したよね!?
しかも、名前まで呼んで…
恥ずかしい…
シャワーを頭から浴び、冷えきった体が溶けていくのを感じる。
でも、いいんだ。
恥ずかしかったけどいい。
香月くんが私と同じ気持ちを返してくれなくてもいい。
さっきは香月くんと恋人同士になる未来を望んだけれど…
香月くんが今、生きている。
それだけで、本当に本当に嬉しい。
湯船に浸かり、ぼんやり湯気を見つめる。
いまだに信じられないけど…
体から何かがすっぽり抜けたような不思議な感覚。
もう予知夢を見ることはないんだってわかる。
そのことが嬉しいような、どこか寂しいような…
私を苦しめてきた夢は、私に幸せを落として消えていった。
お風呂から出て、急いでリビングに向かう。
「ごめんね。香月くんお待たせ。」
香月くんは真剣な顔で私を待っていた。
「麻、隠してたこと全部話せ。」
「うん…」
私は心のなかに秘めていたことを包み隠さず話した。
バス事故のこと。
予知夢が変わったことを言えずにいた理由。
昨日嘘の気持ちを言った理由。
本当は香月くんのことが好きだということ。
香月くんは相づちを打ち、静かに聞いてくれた。