夢の中。
いつものように肌に触れる雨の感触。
いつものように香月くんはバスに乗る。
いつものようにはやる気持ち。
いつもと違ってなぜかスマホが見れて
なぜか日付がくっきりと見えた。
『10/24』
***
「急がなきゃ!」
ベッドから飛び起き、慌てて制服に着替える。
今日はいつもより早く起きられた。
だから大丈夫。
間に合う。
大丈夫。
横目にカレンダーをとらえる。
間違いなく、10/24は今日だった。
一刻も早く香月くんの家に…
ピロン♪
スマホの通知が鳴り、急いでいたのに思わず画面を開く。
『今日は雨だから先バスで行く』
"バス"
私はカバンも持たずに家を飛び出した。
電話を掛けても通じない。
メッセージの既読もつかない。
まずい!
まずい!!このままじゃ…!!
香月くんの家周辺のバス停を探す。
頬に当たる雨。
夢と同じ感覚…。
気分が悪くなり、途中で膝をつく。
「…うっ…っ香月くん…!」
電話に出てくれない。
私のせいだ。
私が香月くんを傷つけてしまったから…
自分の気持ちを言葉にしなかったから…!
『言葉で未来は変えられる』
大連くんの言葉が頭をよぎった。
この言葉を聞いて、私は予知夢を回避するためのなにか…
よくわからないけど『なにか』を感じた。
冷静になれ。
考えろ。
私が今まで変えてきた未来…
1つ目
香月くんに『友達になって』と言ったこと。
交わるはずのなかった香月くんと私の未来が交わった。
2つ目
香月くんに予知夢を信じてもらったこと。
自転車事故がバス事故に変わった。
じゃあ…今回は?
もう一度未来を変えるにはどうしたらいい?
考えろ。
私は今まで言葉で未来を変えてきたんだ。
なかったはずのことをあり得る世界に…
死ぬはずだった香月くんの未来を
生きられる未来に。
なかったはずのこと…
『麻、好きだ』