「ちょ、麻!」
ホームルーム中、後ろの席に座るよっちゃんが
私の服を引っ張ってきた。
「おはよ、よっちゃん。」
「おはよ。何よ、いつ香月くんと挨拶する
ようになったわけ?」
ヒソヒソと、でも確実に楽しそうに
よっちゃんは私に聞いてきた。
そりゃそうだ。
ヒエラルキー"中の中"の私が
上層部の香月くんと仲良くなるなんて、
普通ない。
しかもよっちゃんは恋バナを
こよなく愛してるからな…
「昨日、友達になって…
帰り道も同じだし。」
予知夢のことやサッカー部の中から呼び出して
友達になってくださいって頭を下げたことは
とりあえず黙っていよう。
「へぇ~、素敵!
一緒に下校なんて、恋が生まれそう。
今日のギリ登校も、昨日ドキドキして
眠れなかったとか!?」
「違うし。
ホント、すぐ恋愛に持ってくんだから~」
「えへへ、趣味です。」
よっちゃんはにかっと笑って私にVサインを向けた。
「よっちゃん、いつもの時間に来たんだよね?」
「うん、8時15分くらい。」
「香月くんって何時ごろに登校してきた?」
「教室来たのは麻の少し前だけど、
登校はもっと早いと思うよ。
今日朝練してたみたいだし。」
「朝練!!?」
思わず大きな声を出してしまい、
私は慌てて体の向きを戻した。
先生にじろりと睨まれる。
恥っず!!
そっか…朝練…
私バカだ。
そんな可能性も考えてなかったなんて。
もし今日が予知夢の実現する日だったら…
考えてゾッとした。
もっと…
気を引き締めないと。
私のミスで守れるかもしれない命が
なくなることがあるんだ。