「っ…」
「悪い。やり過ぎた…。」
香月くんは私の肩から手を離した。
その瞬間、心のなかに言い様のない寂しさが広がる。
「あの…えっと…」
「麻、なんで逃げなかったんだ。」
「えっ…!」
香月くんの熱っぽい瞳に目を奪われる。
そんなの…
あなたのことが好きだからに決まってる。
でも…
「麻、好きだ。」
一瞬耳を疑った。
今…好きって…?
香月くんが私を?
「え……」
でも…
でも
好きなわけない。
最初、事情を話さずストーカーしてたときの
軽蔑しきった顔を思い出す。
そうだ。
きっと今回もいつもみたいにからかって遊んでるんだ。
本気にした私を笑うために…
「わ…私が香月くんのそばにいるのは
使命感
だけで…」
思ってもいない言葉はどうしてこんなに重いんだろう。
「……」
しばらく沈黙が流れた。
私はふと顔を上げ、愕然とする。
香月くんが顔を真っ赤にして俯いていた。
「え…」
「今日は先帰る。
安心しろ。絶対歩くから。」
「待っ…」
引き留めようとする私の手を香月くんは振り払った。
「絶対歩くから」
香月くんはそう言って部室を出ていった。
真っ赤にうつむく香月くんの顔が頭から離れない。
傷つけた…
香月くんを…傷つけてしまった…。
私の心に強烈な後悔が広がった。
そこからどうやって帰ったのか、
あまり覚えていない。
翌朝、目が覚めて気づいた。
予知夢のX DAYは今日だ。