「香月、お前モテモテじゃん。」

大連くんが茶化すように言う。

「…」

「香月く~ん」

離れた席の女子たちが香月くんの名前を呼んだ。


どうして女子の中で一番仲が良いのは私だなんて勘違いしてたんだろう。

私は物理的に近くにいるだけだ。
私からの一方的なお願いで。


「アハハ…香月くん、呼んでるよ?」


急に恥ずかしくなった。
なんかいろんなことが。

普段、香月くんと子供みたいな言い合いをしていることも。
今、こんなダサい格好で香月くんの隣に立っていることも。


「早くいきなよ。」

あ、今…とげのある言い方した。

もうやだ。自分を嫌いになりそう…




「七瀬さんがダサいコスプレでよかったな。
あー、お前がそう仕向けたのか。」


「あ?」


私たち4人の間に一気に重い空気が広がった。

高崎くんが香月くんに急に変なことを言い出したのだ。


「た、高崎くん…?
えっと…大連くん…」

とっさに大連くんに助けを求める。

大連くんはニコニコしながら私たちを見ているだけ。

いつも大人で頼りになるのに、なぜ!!?


「ダサいな。香月。」

「……」

「な、何言って!だ、ダ貞子はあたしで…」


急にどうして?
いつも香月くんと高崎くん仲良かったのに…


「うるせぇ」

自分に言われたのかと思い、体を縮める。


「香月く~ん。」
「ちょっと来てー!」


香月くんはそっちを見るそぶりも見せず、
高崎くんをにらんでいる。


長い沈黙のあと、香月くんはきびすを返して呼ばれた方へ行ってしまった。


「ハハ…図星でなんも言えずに逃げた。」

「高崎、香月のこといじめすぎ。」

「多少は多めに見ろよ。俺、可哀想だろ。」

「いや、まぁ…」

大連くんは難しそうな表情で私を見上げた。

「あの…なんのこと?」

「麻、ちょっと」


大連くんは立ち上がり、私を教室の隅へ呼んだ。