だんじり囃子の船が近づいたのか、次第に鉦の音が大きくなってゆく。

「日下部、俺はお前は間違ってなんかないと思う」

 大事だと思ったのか言い直した。

「…ありがと」

 美織は微笑んだ。

 花火が開いて、美織の頬に涙の跡があるのが見えた。

「中濱くんは、大阪は何日いるの?」

「明日には帰る。ほとんど蜻蛉返りみたいなもんだからね」

 そっか──美織は、

「LINEだけ教えておくね」

「勘違いされないか?」

「だって学生時代の仲間やん。そんなん文句なんか言わさへん」

 美織は強がっているのかも知れなかった。