美織は何かを思い出したようで、

「中濱くんさ、覚えてる?」

 花火の炎を見て、やれマグネシウムだ銅だと言っていたら、そばのサラリーマン風のカップルが「雰囲気壊れるから邪魔」って言ってきたことを思い出したらしい。

「あの時、中濱くんったら『お前ら食うて寝てヤるだけやないか』って言い返して。そしたらカップルいなくなってさ」

「若気の至りだったんかなぁ」

「でも、ドライな割に面倒見のいい中濱くん、私は嫌いじゃなかったよ」

 花火の爆音に、だんじり囃子がかき消されてゆく。