その日は大阪の天満宮の天神祭の船渡御の日で、朝から蒸し暑かったが、夕立のあとはひんやり涼しくなった。
十数年ぶりに大阪へ帰って、学生時代のときに見てそれっきりであった船渡御は、だんじり囃子も、手古舞も、娘神輿も変わらないままで、ただ中濱一慶のアクセントがすっかり関西弁から変わってしまい、今住まっている札幌と、生まれたはずの大阪が入れ替わってしまって、まるで旅に来た道産子のような、異郷へ放り出されたような心持ちにもなったらしかった。
「中濱くん、久しぶりやね」
ばったり北浜で出くわした日下部──今は結婚して堤になったらしいが──美織は、
「中濱くんってさ、すっかり関西弁抜けちゃったんやね」
なんか寂しいな──少しだけ哀しげな目をした。