「えええ!?誰かにつけられてた!?!?」
思わず大声を出してしまえば、
さっちゃんにバシッと頭を叩かれる。結構強かった、いい音した。
涙目で痛みを訴える私の頭を、「ごめんて」と言いながら
今度はポンポン、と優しく叩く。
・・・くっそう、なんだこの天然タラシめ。
いやでもこれは大声が出てしまうだろう。
横を見れば塚田くんも口をパクパクさせていて。
「ストーカー確定じゃんそんなの!」
「だだだだよね、塚田くんどうしよう、」
「警察だよ!警察に通報しなきゃ」
「えっと警察は・・・何番だっけ!?」
「そこ忘れちゃダメだろ!」
「2人ともうるさい。落ち着いて。」
さっちゃんの鋭いツッコミを浴びた私達。
一旦落ち着こうとする、も。
「・・・いや落ち着けないよ!だって完璧ストーカーじゃん!?」
私の言葉に塚田くんが大きく頷く。
今朝、昨日の事を聞こうとさっちゃんに声をかければ、
さっちゃんの口から出たのは驚きの言葉で。
『ありがとね電話。』
『全然。どうしたの?』
『昨日なんかさ、誰かがずっとついてきててさ。』
『・・・は?』
その言葉に隣で俯いていた(というより寝ていた)春原くんも、
そんな春原くんにちょっかいをかけていた塚田くんも顔を上げる。
さっちゃんの話によると。
昨日の学校の帰り道、1人で暗くなってしまった道を歩いていたさっちゃんは、
学校から少し離れたあたりで誰かが後ろにいる事に気づき。
人通りも全くないわけではなかったため、
最初は特に気にせず歩いていたらしい。
しかし近すぎず離れすぎずの距離がずっと崩れない事、
さっちゃんが振り向けば顔を隠すように俯く事から、違和感を覚え始めて。
試しに反対方向へと戻ってみればその人も同じように逆方向に歩き出した事から、
つけられている、と気づいたそうだ。
「それで誰かと電話繋いだ方がいいかなって思って電話したの。」
「なんでその場で言ってくれなかったの!すぐ迎え行ったのに!」
「なんかされた訳じゃなかったし、勘違いだったら嫌じゃない。」
「・・んもう!さっちゃんの馬鹿!無事だったからよかったけどさ!」
思わずさっちゃんに抱き着いてしまった私。
私の言葉に塚田くん春原くんも頷いて。
「・・その人の特徴は?身長とか。」
春原くんの質問にさっちゃんはうーん、と斜め上を見る。
「身長はそんなに高くなかったと思う。」
「服装とかは?」
「・・・暗かったからなあ。・・・でも。」
一瞬とても不安そうな顔をして、でもそれを隠すかのようにため息をついて笑った。
「ネクタイ、多分してて。・・・うちの学校のだったかも。」
それと同時にチャイムが鳴って、
立ち上がってた生徒たちが席へと戻り始めた。
まあ勘違いかもしれないけどね!そう言い残してさっちゃんは自分の席へと戻って行く。この学校の、生徒。さっちゃんのストーカーが今も近くにいるかもしれない、という事。
さっきの不安そうなさっちゃんの顔が、なかなか頭から離れなかった。