体育祭までの数週間は、体育の時間・ホームルームの時間を体育祭の練習の為に
充てることが出来る。
先生によっては科目の時間を練習のために使わせてくれる先生もいて。
現在2時間目。
ゆるさで有名数学のおじいちゃん先生が時間を使わせてくれた。
キュッキュ、と靴と体育館が擦れる音と共に走るクラスメイト。
バスケットボールが宙に放たれて、見事ゴールに入る。
すごいなあみんな。同じ人間なのかなあ。
私は当然バスケットには出場しないため端っこに座りながら試合を眺めていれば、
不意に横に立った気配がして。
「あれ、バスケットは出ないの?」
「絶対分かって聞いてるよね。」
「当日は何に出るの?」
「何に出ると思う?」
「…玉入れとか。デカパンリレー。」
「あれ?なに私のこと小学生だと思ってる???」
ふあ、と欠伸をしてそのまま横に腰かけた春原くんは練習をしてきたのだろう、
珍しく半ズボンになっていて。
「春原くんはバスケ出ないの?あんなに上手なのに。」
「出ないよ。」
いつかの体育の事を思い出してそういえば、
春原くんは少し顔を顰める。
「塚田が出ろってうるさくて。打倒2組に燃えてるらしい。」
「ああ、塚田くんガチだもんね。」
春原が出れば絶対勝てる!教室でもそうやってバスケ部員と共に勧誘していた様子を思い出した。
結局春原くんの粘り勝ちらしい。
「バスケって疲れそうだもんね。」
「歩くだけでつかれるのにね。」
「ああ、めっちゃ分かる。」
「秋山は、こういうイベントとか嫌いじゃないの。」
「うーん。」
運動は確かに嫌いだけど。
体育祭自体は、別になあ。
シュートを決めて嬉しそうにハイタッチをする運動部員達、
隅にいながらも試合を見つめてなにやら楽しそうに話しているクラスメイト、
当日の服装とお化粧について語り合う女子たち。
「嫌いじゃないかなあ。
…このクラスの事。好きだし。」
運動が出来なくて迷惑を掛けてしまっても、優しいクラスメイト達は笑って許してくれるのだ。ありがちなギスギスした雰囲気がこのクラスには無くて。
むしろイベント自体は好きかもしれない。
いつもとは違う雰囲気に、少しドキドキする。
「そっか。」
「まあ何も貢献できないんだけどね。運動は苦手だし。」
「確かに。」
「1回くらいフォローしてみよっか??」
でも少しくらい役に立ちたいなあ。
なんて私の呟きを春原くんは黙って受け取る。
春原、なんて彼の名前を呼ぶ声がして顔をあげればそこにいたのは塚田くん。
「次、別の種目の練習だって。」
「えー」
「えーじゃない、ほら、起立。」
渋々立ち上がった春原くんを、塚田くんが引っ張っていく。
…あれ、なんか。
「春原くん。」
「何?」
「足、痛い?」
少しだけ、本当に少しだけだけど。
心無しか右足を引きずっているような気がした。
春原くんが少し驚いたのが分かる。
しかしすぐにまたいつもの無表情に戻って、ひらひらと手を振って。
「大丈夫。」
「…そっか。」
否定も肯定もしない大丈夫という言葉。
まあでも本人がそういうのなら大丈夫なのだろう。
塚田くんに連れてかれる春原くんを見送って、
バスケの試合をしばらく観戦した。
充てることが出来る。
先生によっては科目の時間を練習のために使わせてくれる先生もいて。
現在2時間目。
ゆるさで有名数学のおじいちゃん先生が時間を使わせてくれた。
キュッキュ、と靴と体育館が擦れる音と共に走るクラスメイト。
バスケットボールが宙に放たれて、見事ゴールに入る。
すごいなあみんな。同じ人間なのかなあ。
私は当然バスケットには出場しないため端っこに座りながら試合を眺めていれば、
不意に横に立った気配がして。
「あれ、バスケットは出ないの?」
「絶対分かって聞いてるよね。」
「当日は何に出るの?」
「何に出ると思う?」
「…玉入れとか。デカパンリレー。」
「あれ?なに私のこと小学生だと思ってる???」
ふあ、と欠伸をしてそのまま横に腰かけた春原くんは練習をしてきたのだろう、
珍しく半ズボンになっていて。
「春原くんはバスケ出ないの?あんなに上手なのに。」
「出ないよ。」
いつかの体育の事を思い出してそういえば、
春原くんは少し顔を顰める。
「塚田が出ろってうるさくて。打倒2組に燃えてるらしい。」
「ああ、塚田くんガチだもんね。」
春原が出れば絶対勝てる!教室でもそうやってバスケ部員と共に勧誘していた様子を思い出した。
結局春原くんの粘り勝ちらしい。
「バスケって疲れそうだもんね。」
「歩くだけでつかれるのにね。」
「ああ、めっちゃ分かる。」
「秋山は、こういうイベントとか嫌いじゃないの。」
「うーん。」
運動は確かに嫌いだけど。
体育祭自体は、別になあ。
シュートを決めて嬉しそうにハイタッチをする運動部員達、
隅にいながらも試合を見つめてなにやら楽しそうに話しているクラスメイト、
当日の服装とお化粧について語り合う女子たち。
「嫌いじゃないかなあ。
…このクラスの事。好きだし。」
運動が出来なくて迷惑を掛けてしまっても、優しいクラスメイト達は笑って許してくれるのだ。ありがちなギスギスした雰囲気がこのクラスには無くて。
むしろイベント自体は好きかもしれない。
いつもとは違う雰囲気に、少しドキドキする。
「そっか。」
「まあ何も貢献できないんだけどね。運動は苦手だし。」
「確かに。」
「1回くらいフォローしてみよっか??」
でも少しくらい役に立ちたいなあ。
なんて私の呟きを春原くんは黙って受け取る。
春原、なんて彼の名前を呼ぶ声がして顔をあげればそこにいたのは塚田くん。
「次、別の種目の練習だって。」
「えー」
「えーじゃない、ほら、起立。」
渋々立ち上がった春原くんを、塚田くんが引っ張っていく。
…あれ、なんか。
「春原くん。」
「何?」
「足、痛い?」
少しだけ、本当に少しだけだけど。
心無しか右足を引きずっているような気がした。
春原くんが少し驚いたのが分かる。
しかしすぐにまたいつもの無表情に戻って、ひらひらと手を振って。
「大丈夫。」
「…そっか。」
否定も肯定もしない大丈夫という言葉。
まあでも本人がそういうのなら大丈夫なのだろう。
塚田くんに連れてかれる春原くんを見送って、
バスケの試合をしばらく観戦した。