「本当にすまなかった。」

翌日、生徒会室に呼ばれた私とさっちゃんと春原くん、ついでに塚田くん(おい)。

「私からも、本当にごめんなさい。」

教室に入れば会長だけでなく、
舞先輩にも頭を下げられた。

『優しいよ、すごい。・・優しいんだけどねえ。』

『不器用すぎるところ、あってさ。』

廊下であったとき、そう言っていた舞先輩を思い出す。先輩が言ってた不器用さとはこういう所だったんだろうな。

「本当に悪い人じゃないんだけど、引いちゃうくらい不器用で。」
「うっ・・」
「中学生の時もクラスの女の子に直接話せないからって手紙送りつけちゃってね。
しかもメッセージじゃないのよ、自作の詩よ。誰得?って感じじゃない?」
「ううっ・・・」
「しかも下駄箱にほぼ毎日。恐怖体験よね。」
「舞先輩、そろそろやめてあげてください。会長死んじゃいます。」

普段の口調で淡々とディスり続ける舞先輩に、
会長のHPはほぼゼロ。・・・舞先輩、結構毒舌極めてるタイプの人?


「怖い思いをさせてしまってすまなかった。
君たちも、巻き込んでしまって本当にすまない。」

もう一度深々と謝った会長に、さっちゃんは笑って。

「そんな全然。気にしてないですよ。」
「いや、でも怖い思いをさせてしまった。」
「いやいや。全部物も返ってきたし、」

ていうか、とさっちゃん。

「私が落としたのを拾ってくれただけじゃないですか。ありがとうございます。」

そう言ってにっこりと笑う。

ズキュンッと心臓が射抜かれる音が聞こえた。
・・・いや、私じゃなくて。

「っ・・・そっそんな・・お、お礼を言われるほどの事では・・・!」

もちろん会長である。
・・この定型文、最近使った気がするなあ。

「あ、でもノートは使い終わりだし要らないかなあ。」
「!!」
「・・・須藤くん?」
「ごめんなさい。」

さっちゃんのその言葉に会長の目が輝いたのが分かったが、舞先輩の鋭い視線に即謝る。息ぴったり。



そんなこんなで今回のさっちゃんストーカー事件は
大きな問題となることなく幕を閉じた。

のだが、秋山結依、ここで恐ろしい事に気づく。

「あの、会長。」

部活があるためと先に生徒会室を後にしたさっちゃんと塚田くん。教室に残っているのは私と春原くんと会長、そして舞さん。

「・・下敷き、落とし物として生徒会室に届いたんですよね?」
「ああ、そうだ。」
「じゃあ誰のか分からない状態で届いたってことですよね?」

当たり前だろう、と会長は不思議そうな顔で頷く。

「じゃあなんで、さっちゃんのって分かったんですか?」

小学生じゃないんだから、下敷きに名前なんて書いてあるはずがない。
さっちゃんがいつもいつも使っている下敷きは黄色と青のストライプが入っていて確かに特徴的だけど、そんなのはいつも見ている私だから覚えたんだと思う。
私の言葉に会長は顔を真っ赤にして。

「ちっ・・違うんだ!その!美しいなと偶然廊下で会う度目で追ってしまって!その時にいつも持っていたから覚えてしまって・・・」
「・・・偶然会う度?」
「・‥。月曜日と水曜日の3限は移動教室で2階の廊下を通ることは承知している。」
「春原くん、やっぱこの人クロ。」
「間違いない。」
「ごめんなさい、私も否定できないわ。」
「ちょっと待ってくれ!!!」

ナチュラルにストーカーである事は
否定できない会長なのであった。