「あら、この前の。」
移動教室に向かっていた途中。
廊下を歩いていた私の背中に誰かから声がかかる。
「あ、舞先輩、会長。こんにちは。」
「こんにちは。移動教室?」
振り向けばそこにいたのは微笑む舞先輩と、
軽く表情を緩めて手を上げる会長で。
「そうです。先輩たちは?」
「私たちはこれから教務室に行くの。出さなきゃいけない書類があって。」
よく見れば会長の手にはプリントが握られていて、
これを届けに行くのだろう。
・・・生徒会役員は色々大変だなあ。
少し次の授業まで時間があったためそのまま立ち話をしていれば、
突然小さな悲鳴が上がって、
バサバサバサと何かが落ちる音がして。
「おいー、なにやってんだよー!」
「悪い!勢いあまりすぎた。」
驚いて振り向けばそこには男子の塊。
どうやらじゃれて遊んでいる最中に
1人の筆箱の中身を落としてしまったようだ。
「あらら。」
少し距離があったため、拾うのを手伝おうか手伝わないか迷ってしまった私。
そんな私を尻目に、一切の迷いなく動きたしだのは会長で。
「悪い舞。これ少し持っていられるか。」
「うん。」
持っていたプリントを舞先輩に預けて、
会長はスタスタと歩き出す。
「はい。」
「あ、ありがとうございます。」
中身を拾うのを手伝った会長は、
転んだ男子生徒を見て、少し眉をひそめる。
「・・す、すいませんでした!!」
相手が会長であった事、廊下で騒いでいた事から、
怒られると思ったのか肩をすくめて謝る男子たち。
しかし会長の視線は彼の手へと向かっていて。
「指。」
「・・え?」
「血が出ている。よかったらこれを。」
ポケットから絆創膏を取り出した会長は、
絆創膏を筆箱を落とした彼に渡す。
「あ・・りがとうございます。」
ポカーンとした顔のままお礼を言った男子に、
会長は少し微笑んで。
「廊下で話すのはいいが…怪我はしないようにな。」
ズキュンッ、と心臓が射抜かれる音が聞こえた気がした。
・・・いや、私の心臓じゃなくて。
「はっ、はい!!」
筆箱を落とした彼の心臓だ。
その瞳は数分前の数倍キラキラしている。ああ、これはもう。
「・・落ちたわね。」
「落ちましたね。」
舞先輩のつぶやきに頷く。
心なしか顔が赤くなっている気もする。
恋か、恋してしまったのか少年よ(同級生だけど)。
会長の人望が厚い事は以前さっちゃんから聞いていたけれど、なるほど。
こういう優しさも、彼が人を引き付ける理由なのだろう。
「会長、優しいですね。」
私の言葉に今度は舞先輩が頷く。
しかしその顔にはなぜか苦笑いが浮かんでいて。
「優しいよ、すごい。・・優しいんだけどねえ。」
「・・・?」
「不器用すぎるところ、あってさ。」
そう言って舞先輩はため息をつく。
・・ああ、でも確かに不器用そうな感じはするなあ。
「不器用すぎてね、もう本当に・・・」
「舞、そろそろ時間だ。」
何かを言いかけた舞先輩の後ろから会長が声をかけて、
腕時計を見た先輩はあら、と声を出す。
「本当だ。ごめんね引き留めちゃって。間に合うかしら?」
「いやいやそんな!全然間に合います。」
「またお話しましょ。」
そう言って手を振ってくれた舞先輩に続いて、
それじゃあ、と会長も声をかけてくれる。
ペコリと礼をして私も時計を見れば、
やばい、あと一分。急がなければ。
移動教室に向かっていた途中。
廊下を歩いていた私の背中に誰かから声がかかる。
「あ、舞先輩、会長。こんにちは。」
「こんにちは。移動教室?」
振り向けばそこにいたのは微笑む舞先輩と、
軽く表情を緩めて手を上げる会長で。
「そうです。先輩たちは?」
「私たちはこれから教務室に行くの。出さなきゃいけない書類があって。」
よく見れば会長の手にはプリントが握られていて、
これを届けに行くのだろう。
・・・生徒会役員は色々大変だなあ。
少し次の授業まで時間があったためそのまま立ち話をしていれば、
突然小さな悲鳴が上がって、
バサバサバサと何かが落ちる音がして。
「おいー、なにやってんだよー!」
「悪い!勢いあまりすぎた。」
驚いて振り向けばそこには男子の塊。
どうやらじゃれて遊んでいる最中に
1人の筆箱の中身を落としてしまったようだ。
「あらら。」
少し距離があったため、拾うのを手伝おうか手伝わないか迷ってしまった私。
そんな私を尻目に、一切の迷いなく動きたしだのは会長で。
「悪い舞。これ少し持っていられるか。」
「うん。」
持っていたプリントを舞先輩に預けて、
会長はスタスタと歩き出す。
「はい。」
「あ、ありがとうございます。」
中身を拾うのを手伝った会長は、
転んだ男子生徒を見て、少し眉をひそめる。
「・・す、すいませんでした!!」
相手が会長であった事、廊下で騒いでいた事から、
怒られると思ったのか肩をすくめて謝る男子たち。
しかし会長の視線は彼の手へと向かっていて。
「指。」
「・・え?」
「血が出ている。よかったらこれを。」
ポケットから絆創膏を取り出した会長は、
絆創膏を筆箱を落とした彼に渡す。
「あ・・りがとうございます。」
ポカーンとした顔のままお礼を言った男子に、
会長は少し微笑んで。
「廊下で話すのはいいが…怪我はしないようにな。」
ズキュンッ、と心臓が射抜かれる音が聞こえた気がした。
・・・いや、私の心臓じゃなくて。
「はっ、はい!!」
筆箱を落とした彼の心臓だ。
その瞳は数分前の数倍キラキラしている。ああ、これはもう。
「・・落ちたわね。」
「落ちましたね。」
舞先輩のつぶやきに頷く。
心なしか顔が赤くなっている気もする。
恋か、恋してしまったのか少年よ(同級生だけど)。
会長の人望が厚い事は以前さっちゃんから聞いていたけれど、なるほど。
こういう優しさも、彼が人を引き付ける理由なのだろう。
「会長、優しいですね。」
私の言葉に今度は舞先輩が頷く。
しかしその顔にはなぜか苦笑いが浮かんでいて。
「優しいよ、すごい。・・優しいんだけどねえ。」
「・・・?」
「不器用すぎるところ、あってさ。」
そう言って舞先輩はため息をつく。
・・ああ、でも確かに不器用そうな感じはするなあ。
「不器用すぎてね、もう本当に・・・」
「舞、そろそろ時間だ。」
何かを言いかけた舞先輩の後ろから会長が声をかけて、
腕時計を見た先輩はあら、と声を出す。
「本当だ。ごめんね引き留めちゃって。間に合うかしら?」
「いやいやそんな!全然間に合います。」
「またお話しましょ。」
そう言って手を振ってくれた舞先輩に続いて、
それじゃあ、と会長も声をかけてくれる。
ペコリと礼をして私も時計を見れば、
やばい、あと一分。急がなければ。