「なんだよ。そいつから告られてるのか。じゃあ、もう付き合ってんのか?」
「付き合ってないよ。私、断ったから」
「はああ? 悪い、お前の言ってること意味わかんねえ!」

私も自分で何を言っているのか分からなくなった。

「だから、付き合えないってその人に言っちゃったの」
「なんだそれ? 何考えてるんだよ? そのハルってやつのこと好きなんじゃないのか?」

私は答えに詰まったまま、目を窓の外に逃がした。

うーん。確かに私は何を考えているんだろう?


「やっぱり自分の病気のこと、気にしてるのか?」
「それもある・・・かな? でも一番はそれじゃない・・・かな?」
「ああああ、めんどくせえ! スズメらしくねえなあ!」

克也はやりきれないような顔をしながら叫んだ。
克也はハッキリしないのが嫌いなんだった。

「ううん。これが私だよ。素直じゃないんだ」
「分かった。俺が何とかしてやる。誰だよ、そいつ?」

「いいよ、余計なことしなくて。私は平気だから」
「じゃあ、なんでさっきあんなに寂しい顔してたんだよ」

やっぱり見られてたんだ。克也はやっぱり鋭い。

「見てたの?」
「お前のことはずっと見てるよ」

辛い言葉だった。

「ごめん」
「だからもう謝るなよ」

「ありがとう。でも本当にもういいんだ。彼は私の病気のことだってこと知っちゃったし、私のこと重荷になると思う」
「俺は、お前のこと重荷だなんて思ってなかったぜ」
「ごめん。そういう意味で言ったんじゃないよ・・・」

ダメだ。これ以上は何を言っても克也を傷付けてしまう。
やっぱり私って酷い女だ。

「素直になれよ」

 ――え?

「本気で好きなら素直になれよ」

何も言えなかった。
そう、私は素直じゃない。

「俺、帰るわ」

克也はすっと立ち上がると出口へと向かった。
ドアに手を掛けると私のほうを振り返りフッと笑った。

「俺、やっぱりスズメが好きだ!」

克也の優しい目がさらに辛さに拍車をかける。

「ありがとう・・・・・」

克也の目があまりにも眩しくて思わず目を逸らした。

「な、俺はスゲエ素直だろ!」

克也はそう言うとすっと手を挙げて病室を出て行った。

気がつくと目に涙が溢れていた。

ありがとう克也。
私は心の中でもう一度呟いた。

私は何をグズグズ考えていたんだろう?