僕はペン子さんが誰なのがどうしても知りたくなった。
ペン子さんに会いたくなった。

僕はハルノートにまた返事を書いた。


『ありがとうございます。よかったら今度、僕と会ってもらえませんか』


うわああ。こんなこと書いていいのだろうか? 
まるでラブレターのようだ。

よし。これをもう一度ペントハウスに置こう。
ペン子さんはこれを読んでくれるだろうか?


次の日の昼休み、僕は不安と期待を胸にハルノートを置きにペントハウスの外階段を駆け上がった。

給水塔への門に手を掛けると、ガシャン――といつもと違う音と手応えがした。

「え?」

門が開かない。
よく見ると壊れていた鍵が新しく付け替えられている。
僕は愕然とした。

アースラだ。
ここの鍵が壊れているのを知って直したんだ。
アースラがまた極悪の魔女に見えた。

なんてことだ。もうここにはもう入れない。

つまりハルノートを置くことができない。
ペン子さんにこのノートを渡すことができないじゃないか。

僕は茫然としながらうな垂れた。

でも僕はどうしてもペン子さんが誰なのか知りたかった。
会ってお礼が言いたかった。

あそこに生徒が入ることは授業の時間中にはまず無いと考える。
そうするとやはり昼休みか放課後だ。

ということは、ペン子さんはあの日、昼休みにあそこにいた生徒の誰かという可能性が高い。

あのペンギンのイラストが手がかりにならないか考える。
なぜペンギン? 
何も連想ができない。

しかし考えてみよう。
あのペントハウスの上にいるのはいつも決まった生徒《メンバー》だ。

男女ふたりずつの四人組と、いつも一人で本を読んでいる女子生徒。
僕の中の本命の女の子の麻生菜美だ。

僕は麻生さんがペン子さんのような気がしていた。
いや、そうであって欲しいとの願いだったかもしれない。

思い切って本人に聞いてみようか。いや、聞けるわけがない。
僕は大きく首を横に振った。
僕は女の子とまともに喋ったことがないのだ。

僕にとって女の子に声を掛けることはテストで満点をはるかに取るより難しいことだった。

悩みながら教室に戻ると、貼ってあった二月のカレンダーが目に入った。二月の二十九日の日付が目に留まる。

そうだ、今年はうるう年だった。

僕はハッとなる。