「ううん。偶然に起きたと思うことでも、実は全てが定められた運命だってこと。そして必ずそこには何か意味があるってこと。 人と人との偶然の出会いもみんな運命であって、やっぱりそこに必ず意味がある。意味の無い出逢いなんてない。私はそう思ってるんだ」

「僕と葵さんがクラスメイトになれたのも運命ってこと?」

彼女は黙ったまま笑って頷いた。

どうして今更そんな思わせぶりなことを言うんだろうか。
やっぱり僕をフッたことを忘れてるのだろうか。
今日も武田君とヨリを戻したようなことも聞いてるし。

「あのさ・・・今日、最後に武田君が病室に戻ったよね? 何の・・・・・」

思わず言葉を止めた。
何を言い出すんだ僕は。

これは彼女と武田君の二人の話だから他人が訊くことではない。
そもそも僕はもう彼女にフラれているんだから土俵にも乗ってないし。

「気になる?」
彼女は探るような目で僕を見る。

僕は俯いたまま言葉を返せなかった。

「ごめん。それは言えないよ」

僕はその言葉にショックを受けた。
きっと武田君とヨリを戻したんだろう。

既にフラれているのに、今更どうしてショックを受けてるんだ? 
僕は本当に馬鹿だ。

「僕、やっぱりもうここに来るのを止めるよ」

彼女は驚いた顔をしながら僕を見た。

「どうして? 私に会うの・・・嫌?」

彼女は寂しそうに顔で俯いた。
どうしてそんな顔をするんだ?

「だって葵さんは僕のこと、好きじゃないよね?」

どうして僕はこんなことを訊いてるんだ?
やっぱり馬鹿だ。

彼女はしばらく黙っていた。

「そうだったよね。ごめん、もう連絡しないよ」

ちょっと怒ったような口ぶりだった。

「ごめん、怒った? 僕そんなつもりで・・・・・」
「ううん。私が悪いんだ。君が優しいからつい甘えちゃった。もう帰って」

僕は自分の大馬鹿さに呆れていた。

 ――もっと一緒にいたい。

本当はそう言いたかった。

僕はゆっくり立ち上がり、そのまま振り返らずに病室を出た。

せっかくまた会えたというのに僕は何をしているんだろう。
あんなこと言うつもりはなかった。
本当に馬鹿だ。

たとえ彼女が僕のことを好きじゃなくても、一緒にいられるだけで満足だったのに。

もう彼女と会うのは止めよう。

 ――これでいいんだ。

僕は自分にそう言い聞かせた。