問い詰めるように僕を見つめた。その強い眼差しは僕を萎縮させた。

「あ・・・いや、何も・・・」

僕はあからさまに顔が引きつった。

「どう見ても言われた顔じゃん」

本当に僕はダメなやつだ。誤魔化すことすらできない。

「ごめん」
「謝るのは私だよ。みんな私が悪いのに。あの時のことは一生懸命説明したんだけど・・・」
「僕は全然大丈夫だよ」

「あの時はびっくりしたでしょ? 私ね・・・・生まれつき心臓があまりよくないんだ」
「心臓?」

聞いてない、そんなこと。彼女の両親も教えてくれなかった。

「知らなかった?」
「ごめん。知らなかった・・・」

「でもそんな大袈裟な病気じゃないの。発作なんて小さい時からいつものこと。だから心配しないで。海に行った時は、薬を学校のカバンの中に入れっぱなしで、持っていくのを忘れちゃったんだよね。私ってドジだから」

そうだ。
思い返せば、あの日は確かに彼女はカバンを持っていなかったっけ。

「もしかして電車に乗る前に学校に戻ろうとしたのは、薬を忘れたのを思い出したからだったの? 僕、何も知らなくて・・・・本当にごめんね」
「ううん、違うよ。あの時は私のわがままに君を付き合わせたら悪いなって本当に思ったんだ。薬も半日くらいなら平気かなって思ったし・・・・。君に手を引っ張ってもらった時は本当に嬉しかったよ」

「ごめんね。本当に」

ひとつ間違えたら謝って済む問題ではなくなってたのかもしれない。

「もういいよ、謝んなくて。でも楽しかったね。また行きたいな」
「僕でいいの? この前も同じこと言ったけど・・・」
「君と一緒だと気楽でいいからさ」

さらっと発せられた彼女の言葉は僕の体中の力をすうっと抜いた。

やっぱりそういうことか・・・。
ずっと分からなかった自分の立場がようやく見えた。

彼女も友達関係でいろいろと気を使って疲れているんだ。
友達が多い人も多い人で大変なんだろう。
だから僕みたいな気を使う必要がない気楽なタイプの人間が必要なんだ。

でも僕はそれでもよかった。
彼女と一緒にいれるだけで楽しかった。


「ねえ、ハルくんは運命って信じる?」
「運命? 占いか何か?」