彼女はそう言いながらお見舞いのゼリーを一口頬張った。
その言葉は僕の頭をまた混乱させた。

「それ、どういう意味?」

「別にい、分かんなきゃいいよ。あ、これ食べる? 美味しいよ」

彼女はお見舞いのゼリーをひとつ僕に差し出した。

やっぱり僕は友達以下ってことか・・・。
そんなふうに納得しながら僕は大きくため息をついた。


「あのさ、君がみんなと一緒に来たってことは、もしかして私達、同じクラスになったってこと?」

そうか。まだクラス替えの内容は知らなかったようだ。

「うん。そうだよ」
「そっかあ。今年からハルくんとクラスメイトかあ。そうだ、一緒に委員とかやろうよ。学級委員でもやろうか?」

「僕、そういう目立つポジション苦手なんだ」
「あはは、そーだよね。実は私もそういうの苦手だったんだ。委員長に立候補する人とか見ると尊敬しちゃう」

僕は浮かない顔をしながら聞いていた。

「何? 君は嬉しくなさそうだね?」
「正直、ちょっと複雑なんだけど・・・」
「何でよ?」

なぜか不満そうな顔で僕を見る。
まさか、僕をフッたことを忘れてるのか?

その時、僕は彼女が倒れた時のことを謝っていなかったことを思い出す。

「そうだ、まだ謝ってなかったよね。ごめん、怒ってるよね」
「怒ってるに決まってるでしょ!」
「あまりにも突然だったんでびっくりしちゃったんだ。あの時は何もできなくて本当にごめんね」
「ちょっと待って。君、何のことで謝ってるの?」

怪訝そうな顔で僕を睨む。

「は?」
「なんで連絡くれないのよ? お見舞いにも全然来てくれなかったし・・・」

その彼女の言葉に僕は戸惑った。
そうか。僕が彼女のお父さんから葵さんに会うのを止めろって言われたことは知らないんだ。

「あの・・・そのことで怒ってたの?」
「そうだよ」

よかった。
あの時のことはもう怒ってなかった。
僕はちょっとホッとした。

「あの、携帯壊しちゃったんだ・・・」
「携帯?」

「海に落ちた時に携帯も落としてアドレスのデータ全部消えちゃったんだよ。だから連絡先が分からなくて」
「はあ? そういうこと。だったら誰かに訊けばいいじゃない!」
「訊く人いないよ。去年までクラス違ってたもん」

また彼女は大きなため息をつきながら顔が和らぐ。

「あのさ、もしかして私の両親から何か言われたの?」