僕は彼女の両親から会うことを禁止されている。

でも彼女に逢いたかった。
みんなと一緒ならばいいのではないか、勝手にそう思った。

彼女に会って謝りたい。
僕のこと、怒っているかもしれないけど、とにかく謝りたい。
そう思い、僕は一緒に行くことを決めた。

翌日、放課後にクラスメイトのみんなで待ち合わせ、彼女の入院している病院へと向かった。

僕が知らない生徒も数人いた。
三年では別のクラスになった二年の時のクラスメイトもいるようだ。

みんなの話を聞いていると、彼女の病気の具合はそれほど重いわけではなく、あと数日で退院できるとのことだった。
僕はそれを聞いて少しほっとした。

病院の大きなロビー内は診察を待つ患者さんとお見舞いの人で込み合っていた。
総合案内でクラスの女子生徒が部屋番号を言って病室の場所を尋ねた。

エレベーターに乗り、病室のあるフロアで降りる。

「あった。あそこだよ」

女子生徒の一人が彼女の病室番号を見つけた。
病室が近づくにつれ、だんだんと緊張感が高まってきた。
彼女に会うのは何日振りだろうか。

でもちょっと不安があった。
両親に見つかったら何か言われてしまうのではないだろうか。
まさか帰れなんて言われないだろうか。
そんな心配をしながら僕は後ろのほうに隠れながら歩いた。

先頭の女子が病室のドアを開ける。
部屋の奥にあるベッドで本を読んでいる彼女を見つけた。

胸がキュッとなった。

ベッドの横にいたお母さんが立ち上がりゆっくりと会釈をした。
僕は思わず人に後ろに隠れてしまった。

「きゃースズメ! 久しぶりぃ!」

彼女の姿を見るなり女子たちが両手を上げながら叫んだ。


「きゃー、みんな来てくれたんだ!」

彼女の笑顔、彼女の声。
あれから何日も経っていないのに妙に懐かしく感じられた。

「ズスメ、元気だった?」
「元気なわけないじゃん! 私いちおう病気で入院中なんだけど・・・・・」
「あはは、そうだったねー」

病室内にみんなの笑い声が響いた。
僕も前に出て彼女に声を掛けたかった。
でも、そんな勇気は僕には無かった。

その時、彼女が一瞬こちらを向いた。
僕と目が合ったような気がした。
でも彼女はすぐに僕から目を逸らした。

 ――え?

ワザと目を逸らしたようなその仕草に僕はショックを受けた。
やっぱり怒ってるのだろう。