僕は教室の前に貼りだされた新しいクラス名簿を複雑な心境で見つめていた。

『冴木 始』
 そして
『葵 涼芽』

ふたつの名前は同じD組(クラス)の表に記載されていた。
僕は嬉しいのか悲しいのか複雑な気持ちになっていた。

僕は大きくため息をついた。
別のクラスだったらどんなに気が楽だったか。
運命の神様は僕に何をさせたいのか。

こうして僕と彼女はクラスメイトになった。

新しい教室へ行くと、すでに多くの生徒が集まっていた。
でも僕が顔の知っている生徒は四分の一程度もいなかった。

彼女はもう退院したのだろうか。
僕は彼女の姿を捜した。
会いたいような、会いたくないような複雑な気持ちだった。

結局、彼女の姿は見つからなかった。
半分ほっとして、半分がっかりした。

貼りだされた名簿順に席に座る。
やはり、彼女の座る席には誰もいない。
やっぱり、まだ退院してないようだ。

新しい担任教諭から、彼女は入院中でしばらく登校はできないとの話があった。
彼女の体調はそんなに悪いのだろうか。
僕は心配になった。

先生に彼女の容態を訊いてみようかとも思ったが、そんなプライベートなことは教えてはくれないだろう。

「あの、冴木君・・・だったよね?」

ひとりの男子生徒が僕に声を掛けてきた。
見覚えがある男子だ。

「そう・・・だけど」

僕はたどたどしく返事をする。

「俺、武田って言うんだ。去年A組だったけど覚えてるかな? 美術の授業で君のクラスと一緒だったんだけど」

知ってるよ。
サッカー部の武田君。

彼女と仲が良さそうに一緒に歩いていた人だ。
屋上でもいつも彼女と一緒にいた。
彼も同じD組(クラス)なんだ。

もしかして彼女がフラれたというのは彼なのかもしれない。

「今年からクラスメイトだね。よろしく」
「あ、こちらこそ・・・よろしく」

すいぶんとフレンドリーな人だ。
こういう気さくな人は羨ましかった。

「スズメ・・・葵さんのこと、知ってるよね?」
「あ・・・うん」

「あの、さっき先生も言ってたけど、スズメ、今、病気で入院してるんだ。知ってたかな?」

もちろん知っていた。
一緒に救急車で病院まで行ったのは僕なのだから。

「実は、明日みんなでお見舞いに行こうって話をしてるんだけど、よかったら一緒に行かないか?」

予想もしなかった誘いに僕は戸惑った。