終業式も終わり、春休みが始まった。

本来は楽しいはずの春休みだ。
けれども全然楽しい気分にはなれなかった。
こんな気持ちの春休みは初めてだ。

僕は海に落として壊れてしまった携帯を持ってショップへ行き、修理に出した。
さすがに海に水没した本体はすぐに修理不能と判断された。

それだけではなく、携帯内に記憶されていた電話番号やアドレスデータもすべて消えていた。

彼女のアドレスが消えた!
僕は携帯が壊れたことよりもそれがショックだった。

彼女に会えないどころか連絡すら取れない。
これは運命の神様の悪戯だろうか? 
もしくは情けだろうか?

連絡をしたくても、彼女の両親から禁止をされている。
連絡をする術を持っていなければ諦めもつくというものだ。
これでよかったんだ、と自分に言い聞かせた。

しかし、その気持ちとは裏腹に彼女に逢いたいという気持ちは日に日に増していった。

どうしようもないことも分かっていた。
僕はもう彼女にフラれている。
さらに彼女を危険な目に遭わせて両親まで怒らせてしまった。
もう会うことは許されない。

もう会えないのかな・・・。
そう思うと余計に寂しさが込み上げてきた。

せめて元気かどうかだけでも知りたかった。

春休みなので学校からの情報も何もない。
彼女のことを教えてくれる友達もいなかった。

僕はたとえようもない喪失感に包まれていた。
心にぽっかりと穴が開いたような感覚がしていた。

何をしてもつまらなかった。
いや、つまらないという感覚さえ無くなっていた。

僅かな時間だったが、彼女と一緒に過ごした時間がとても愛おしく感じられる。

楽しかった?
うん、確かに楽しかった。

でも彼女と一緒に過ごした時はそんな単純な感情ではなかった。
あんなにも自然でいられた自分がとても不思議だった。

もう彼女に会うことは許されないんだ。
彼女のことは忘れよう。

僕に今できることは、そう努力することしか無かった。


彼女に会うことができないまま春休みは終わった。
四月の最初の登校日、いわゆる始業式の日を迎えた。

僕も今日から三年生になる。
これからは大学受験で勉強も忙しくなりそうだ。

彼女のことはきっぱり忘れて受験モードに切り替えよう、そう決意していた。

しかし、運命の神様はやはり意地が悪いようだ。
新学年というとクラス替えだ。