「なんだあ! 私と二週間しか違わないじゃん!」
「ああ・・・・そうだね」

この会話にちょっと違和感があった。

「そっかあ。よかったあ、ほとんど離れてなくて・・・・」

彼女は喜びながらホッとしているような顔をした。
僕はその意味が分からなかった。

「あの・・・・ハルくん」

何か思わせぶりの口調になった。
「え、なに?」

「私ね、ずっと君に言ってなかったことがあるんだ・・・・」

あらたまって何を言い出すんだろう。
彼女はいつも唐突に話し出すので心の準備が間に合わない。

「私・・・・実は、明日で十八なんだ」

「え?・・・・ああ、そう十八ね・・・」

だから何なのだろうと不思議に思う。
その数字が意味することを理解できなかった。

「え! じゅうはち?」

そう言えば僕は今、何歳だ? 
自分の歳をあらためて確認する。
確か、来月《こんど》の四月の誕生日で十八だよな、僕・・・・。あれ? 

僕はさっきの違和感の理由に気がついた。
彼女を見ると恥ずかしそう顔で僕を見ていた。

「え? もしかして葵さんって?」
「うん。普通だったらひとつ上の学年なの・・・・私、中学の時にいろいろあって、中学二年生を二回やってるんだ」

僕はあの時の男子が言っていた言葉を思い出していた。

『アイツは中学時代遊んでて一年落第してる』

やっぱりあの彼が言ってた噂は本当のことだったんだ。

「ごめんね。私、君よりひとつおばさんなんだ」

その言葉に僕は固まった。

「私の中学時代の噂って、何か訊いたことある?」

探ってくるような言い方だったが、僕は固まったままで、しばらく何も答えることができなかった。

「ううん、別に、何も・・・・」

僕は嘘をついてそのまま平然を装った。
でも嘘が苦手な僕は明らかに動揺して顔をひきつっていた。

そんな僕の顔を見て彼女はくすっと笑った。
「やっぱりね。本当に君って嘘がつけないよね」
「ごめん」

馬鹿! ここで謝ったら嘘だということを認めたことになるだろ! 
僕は自己嫌悪に陥る。

「どうせあまりいい噂じゃないでしょ?」
「・・・・・」

何か慰めるようなことを言いたいのだが、言ってあげられる言葉が見つからない。
結局、僕はしばらく黙ったまま下を俯いていた。

「君ってやっぱりいい人だね。何も訊かないんだね」